
2016年9月4日に、
多治見にて行われた「動物愛護フォーラムin多治見」での、
ともnetさんの発表内容です。
当日の様子と原文は、こちらに。
動物と暮らす方にも、
暮らしていない方にも参考となる素敵な内容なので、
ご紹介します。
『適正飼育について』
「命を預かる者の責任を問う」
私たちともnetは主に岐阜県の保健所、
および名古屋市の動物愛護センターに収容された犬を預かり、
新たな飼い主を探すボランティアをしています。
本日は、
短い時間ですが
皆さまとご一緒に犬の適正飼養について
考えることができればと思います。
犬の適正飼養と一口に申しましても
本当にいろいろな問題があり
そのすべてを本日ここでお話しすることはできませんので
その中の一部についてお話しさせて下さい。
まず、
犬の飼い主の義務として
狂犬病予防法に定められた登録と狂犬病予防注射の実施、
鑑札の着用があることは皆さまご存知であると思いますが、
それとは別に、
動物の愛護及び管理に関する法律がありまして
『命ある動物の所有者は
その動物の習性・性格を理解して
適正に飼養し健康と安全を保持して終生正しく飼う』
ということが決められています。

これは、
現在ともnetで里親を募集している犬の保護当時の写真です。
犬ということは辛うじてわかっても
どんな犬種かも定かではありませんが
シーズー犬です。
必要なお手入れを
何もしないでいたら犬ってこうなるのです。
今日お越しの皆さまは、
これは特殊な例であると思われるかもしれませんが
ともnetに保護されてくる犬たちにはままあることで、
この犬だけが特別でもないのです。
可愛いと思って飼い始めた子犬も
次第に手にあまり最後にはこのような姿にさせられて捨てられる。
適正飼育以前の問題で
この犬の元飼い主は
犬を飼うことに向いていない人だったとしか言いようがありません。
生き物を飼う、
命を引き受ける前に経済面も含めて出来る事出来ない事を
自分に問うてみることが大切です。
次に予防医療の問題です。
予防接種には毎年の狂犬病予防注射以外に
犬の生命及び健康に危険をもたらす病気を
予防してくれる混合ワクチンがありますので
忘れずに接種してあげて下さい。
そして それと同じく大切で忘れていけないのが
フィラリア症の予防です。

今ここに写したとても幸せそうなわんちゃんですが
実はこの犬は、保護された時にはすでに重度のフィラリア症で、
心臓病専門の獣医師に
今この場で死んでも不思議ではないと言われました。
緊急の手術をうけ
心臓からフィラリアの虫を吊り出してもらって
一命を取り留めました。
これが手術の様子と心臓内にいたフィラリアの虫の写真です。

この病気は毎年春から秋の終わりまで
月に1度お薬を飲ませるだけで防げる病気です。
飼い主がたったそれだけのことをしなかったがために
この犬は病気でとても苦しみました。
幸い手術が成功し 今はフィラリアも陰性になりましたが
これは本当に幸運だった一例で、
いまだ多くの犬がこの病気で苦しみながら命を落としています。
他にも、
ともnetには様々な理由で保護されてくる犬たちがいます。
飼い主が高齢になったために
面倒がみられなくなったという理由で保健所に持ち込まれた犬。
犬の寿命は一般的に15年程です。
飼い始める前に15年後の自分を想像してみてください。
そして
自分にもしものことがあった場合に
愛犬を託すことのできる人がいるかどうかも考えて欲しいと思います。
吠える、咬む、この犬は悪い犬だからと飼育放棄をする飼い主もいます。
飼い始めるときにその犬種の特性をよく調べましたか?
その犬種に必要な十分な運動やしつけについて
飼い主が学び実行していますか?
十分な愛情をもって犬との信頼関係を築いていますか?
悪い犬と飼育を放棄する前に今一度、
自分は良い飼い主だろうか?と自問自答してください。
もしもあなたが犬だとして、
犬であるあなたは
人間であるあなたを飼い主にしたいですか?
悪いのは犬ではないのかもしれません。
迷子で収容されて飼い主の迎えのなかった犬たち。
鑑札や迷子札など身元の分かるものをつけてあげて下さい。
最近ではマイクロチップという首の後ろに埋め込むものも
広く普及してきました。
こちらはデータが獣医師会によって管理されて
災害時などに離れ離れになった場合にも
とても有益だと思われます。
そして、万が一愛犬が迷子になってしまった場合は
必ず最寄りの保健所、隣接する自治体の保健所、センター、
警察に問い合わせてください。
「犬は帰巣本能があるからそのうち戻ってくる」は間違いです。
保健所の施設に収容されているかもしれません。
去勢避妊の重要性、
自家繁殖反対などまだまだ、お話ししたいことはたくさんありますが
時間もありませんので最後に、
犬を飼うということは経済的なことを含めて責任を負うということです。
犬の幸せは飼い主によって決まります。
犬を飼うということを選択したのは飼い主自身です。
どうか、
命を預かることの覚悟をもって虹の橋を渡る最後の日まで、
飼い主の責任を全うしていただきたいと思います。
飼い主さまとその愛犬がお互いに
『あなたに出会えてよかった』と
思える素敵な関係を築くことができますように。
不幸な犬がいなくなり、
私たちともnetのような保護ボランティアの活動が
過去のものになる社会が一日でも早く訪れることを
心から願っております。
本日はありがとうございました。